ラスト サムライ〜アメリカでつくった日本史の教科書なんだってば。

銃の歴史がスゴイのよ。
刀よりも詳しいと思うのよ、アメリカだから。最初、ネイサンは皆さんの前で、銃の宣伝をする。この銃はインディアンを殺して改良に改良を重ねてるから、いい銃だよ、って。で、日本に来て、大砲がやってきて、次がガトリング銃だしょ。あああ、さすがだ、銃の歴史だ。人殺ししながら、銃は改良に改良を重ねている、人殺しの歴史。

んなもんより「武士道」のこと、書くのが本筋だけど。
でも銃の歴史の方がスゴイんだってば。あれを、日本を舞台にしてあんなふうにアレンジするってスゲエ。あんなこと、なかなか出来ないって、私は驚嘆してんだよ、銃の歴史は人殺しの歴史。まだ、それ言うかって、言うもんね、スゲー。脚本、スゲー。それが、アメリカから日本に流れてくるんだもん。

「武士道」っていうよりも、ジャパンプレミアの映像で、中村七之助くんが言ってた、挨拶とかの話の方が気になるのだわさ。日本人として観れば、必要以上に挨拶して見えるかも知れないけど、挨拶は大事だもんね。現代は挨拶が抜けている。ネイサンも「Thank You」が「ありがとう」に変わっている。お礼を相手に通じるように言うのはとっても大事なんだ。挨拶は、社交辞令もあるけれど、リスペクトすることだもんね、リスペクトを相手に意思表示する、単純な手段。それがないから、もめ事が起きるんだわ、うん。

どうもね、私は、文化の方が気になるの。死生観一つにしても。
切腹をどう解釈するか。切腹そのものには、肯定するつもりはない。けど、切腹を望む死生観とアメリカ人の死の感覚とか、違うんだよな。私なんか勝元、死ぬなよ、生きて、言いたいこと言えよ、刀なんか会議終わってからさしたらいいじゃん、と思うのだけど、逆に、死んで、時代に釘を刺す、という感覚も理解できないことはない。事件は起きてから、人は動くのである。

はっきり言って、スゴク上手く説明出来ない。もどかしい。

ただね、案外、この映画は考えられる映画なの。いろんなことを考える。新しい時代の中で、古いものは駆逐されるんだろうな、確かに、挨拶をきちんとする、なんてのも、駆逐されつつあるかも知れない。でも、どんな新しいものも、古きものの上にある。古きものがないと新しいものは生まれない。

皮肉にもそれは銃の歴史。前の戦争の「教訓」が新しい「銃」を生む。

でも違うのだ。ネイサンは生き残ったもんね。新しいは常に、古いものと融合している。新しいものはそれを認めたくなくてウダウダ言ってる子供みたいだ。儒教的精神がどうのこうのでなくて、皮肉にも銃の歴史が物語っている。アメリカが得意な銃の歴史がね。

勉強させてもらった。非常に、いい勉強させてもらった。
したが、トムさん、ワンダーランドを愉しんでいたみたいっすよ。もう、うっとり、陶酔って感じで。どうせなら、彼がプロデュースしてない「ラスト サムライ」ってもどうなるか、観てみたいもんだな。


■Staff
監督:エドワード・ズウィック Edward Zwick
製作:トム・クルーズ Tom Cruise
   トム・エンゲルマン Tom Engelman
   スコット・クルーフ Scott Kroopf
   ポーラ・ワグナー Paula Wagner
   エドワード・ズウィック Edward Zwick
   マーシャル・ハースコヴィッツ Marshall Herskovitz
製作総指揮:テッド・フィールド Ted Field
   チャールズ・マルヴェヒル Charles Mulvehill
   リチャード・ソロモン Richard Solomon
   ヴィンセント・ウォード Vincent Ward
脚本:ジョン・ローガン John Logan
   エドワード・ズウィック Edward Zwick
   マーシャル・ハースコヴィッツ Marshall Herskovitz
撮影:ジョン・トール John Toll
編集:スティーヴン・ローゼンブラム Steven Rosenblum
音楽:ハンス・ジマー Hans Zimmer
 
■Cast
トム・クルーズ Tom Cruise ネイサン・オールグレン大尉
ティモシー・スポール Timothy Spall サイモン・グレアム
渡辺謙 Ken Watanabe 勝元盛次
ビリー・コノリー Billy Connolly ゼブロン・ガント軍曹
トニー・ゴールドウィン Tony Goldwyn ベンジャミン・バグリー大佐
真田広之 氏尾
小雪 たか
小山田シン 信忠
池松壮亮 飛源
中村七之助 明治天皇
菅田俊 中尾
福本清三 寡黙なサムライ
原田眞人 Masato Harada 大村