クレイドル・ウィル・ロック 奇跡の一夜〜「自分に正直」はブラボ-

1930年代のニューヨークの実話。大恐慌。、経済が大混乱を起こし、当時のアメリカは、すべてが大混乱に陥った。生活が出来ないって、状況がシンドイのは、歴史について詳しくなくても、身に染みてわかるのだ。仕事がない。でも生きていかなきゃ。そんな状況。

監督のティム・ロビンスは、あの、「ショーシャンクの空に」ティム・ロビンス「CODE64」」ティム・ロビンススーザン・サランドンとご夫婦で、「デッドマン・ウォーキング」も監督なさっている。
俳優さんの監督としては、イーストウッド監督の貫禄勝ちなのだろうが、ショーン・ペンティム・ロビンスこのお二方の監督業も、怖ろしいほどに、スゴイ。才能というのはスゴイのである。まず、映画の内容の前に、その驚嘆、つ〜か、驚く、つーから、スゲーっていうか、そういう部分を書かせてくださいませ。

で、映画はエミリ・ワトソンのオリーブが、劇中劇ともども、主役だが、彼女が主役というわけじゃない。マチガイなく群像劇。それも、めっちゃ、駆け足。
芸達者で、華があって、絢爛たる役者さんたちが、入れ替わり、立ち替わり、ロックフェラーなどの有名人も踏まえて出てくるの。何をしているというわけじゃないのね、ただ、もう、役者のオーケストラ。てんで、バラバラに演じているようで、交響楽な感じがする、誰かかが、ドの台詞を話せば、誰がが、ラを。或いは繰り返し、在るいは、転調。クラシックは眠くなるので、それで、眠くなりがちの作品ではある。ただ、それが、バラバラじゃなくて、リズムが聞こえてくるのは、監督の手腕や、役者たちの良さ、などなど、なのは確かだと思うの。

よって、素晴らしいクラシック音楽が、合わない方は眠りやすい作品だろな、と思ったりする。素晴らしい芸術性がゆえに、エンタメとつながらない。

それでもね、この作品のメッセージの熱さったら!!!!

「資本家」という存在と、「共産主義」という考え方があるの。
そのどっちもが、「ゆりかごは揺れる」っていう演劇の上演を邪魔する。労働組合を題材にした舞台ってね、題材を資本家が嫌い、資本家が用意した舞台という仕事場で、仕事をするのを「組合」が嫌う。なんか、腹立ってくる、図式。でも、明日、上演しようとする、役者たちの気持ちを収まらない。
彼らはそんなこと、おかまいなし。
自分たちの舞台を演じたい。つまり、それが芸術ね。
でも、舞台人たちにも、「組合」があって、仕事の合間の休憩が義務づけられる。でも、稽古が進んでのめりこんでいると、休憩、なんて、ホントは関係ないだろ、っていう役者もいる。
もちろん、資本家は、すべての芸術は金で買える、と思っている。
金で買えない芸術は世に出ない。新聞王ハーストもそんなこと、言っていた。
芸術は宣伝になり、戦争の資金になる。

けれども、上演したい役者たちの気持ちと、舞台を観たい観衆の気持ちは、止められない。
ラスト、30分、のめり込めずにはいられない、「ゆりかごは揺れる」の上演シーン。
観衆に紛れていた役者達が、自分を止められず、舞台に上がる。衣装なんて、着ていない。でも、役を演じる。観衆の中から、民衆の中から、立ち上がるように。

売れない役者が、物語のキーパーソンを演じている。彼は、その舞台を家族で見に来ていた。家族のために、出演を諦めて彼は、立ち上がり演じている。その父親の姿を子供たちは憧れと敬意を持って見つめている。

クレイドル・ウィル・ロック

権力のゆりかごは揺れる。主義主張に汲みしない人の奥底の気持ち。自分に正直な人々の気持ちに胸が熱くなる。

って、感動的な締めくくりにしておきながら、役者さんチェック。
ジョン・キューザックジョーン・キューザック、やはりお顔が似てました。ジャック・ブラックも出ておりました。ジャック・ブラックが演じる、腹話術の人形に扮装している姿は、なかなか!ジョン・タートゥーロは、歌が案外うまかった。ビル・マーレイは、芸達者!


■Staff
監督:ティム・ロビンス Tim Robbins
製作:ジョン・キリク Jon Kilik
   リディア・ディーン・ピルチャー Lydia Dean Pilcher
   ティム・ロビンス Tim Robbins
脚本:ティム・ロビンス Tim Robbins
撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ Jean-Yves Escoffier
音楽:デヴィッド・ロビンス David Robbins
 
■Cast
エミリー・ワトソン Emily Watson
ハンク・アザリア Hank Azaria
スーザン・サランドン Susan Sarandon
ジョン・キューザック John Cusack
ジョーン・キューザック Joan Cusack
ビル・マーレイ Bill Murray
ケイリー・エルウィズ Cary Elwes
アンガス・マクファーデン Angus MacFadyen
ルーベン・ブラデズ Ruben Blades
ヴァネッサ・レッドグレーヴ Vanessa Redgrave
ジョン・タートゥーロ John Turturro
チェリー・ジョーンズ Cherry Jones
フィリップ・ベイカー・ホール Philip Baker Hall
ギル・ロビンス Gil Robbins

最‘新’絶叫計画〜社会的OKなシモネタ悪フザケのボーダーは?

嘘かマコトかヒットしたそうだ。
なんかいろいろ、ウワサあるんですけど。障害者ネタはカットされたとか。でもって、はっきり、黒人差別してんじゃん、とかね。その差別の仕方が「友達のはずが、本心は差別してたけど、友達のフリして偽善だった」みたいなロコツさで。あ、ヤバと思ったわけ。しかも、差別される役を演じる、黒人のお二人が共同脚本。ウェイアンズ兄弟。

【三つのタブーとして、設定する】
●シモネタ(もちろん、そのまま)
●悪フザケネタ(社会的に問題あるやつ)
●ハッパネタ(ラリルってやつ、それをなんとなく擁護してる)

そういうのに対して、反応するじゃん、社会って。それは、社会を構成する個人の何人かが、反応してるってわけでしょ。「過激」とかいう言葉でさ。でもって、ホンマに抹殺されたり、総スカンくらったり、上映されなかったりするのだと思うの。でもって、この作品は、上映された。でもって、ヒットした。だからこそ、思うのね、現代社会のタブーをギリギリなのか、余裕なのかわかんないけど、この作品が一つの物差しになる。

舞台は「ヘルハウス」。扉をコンコンと叩くためには、「オチンチン(←巨大)」の塊を掴まなきゃならない。当然のごとく、「ヘルハウス」はむせぶ、もちろん、男性。握ったのは、ヒロイン、シンディ、女子大生。

あ、言い忘れました、このシリーズ、基本的には、映画のパロディね。
だから、「ヘルハウス」にて、「エクソシスト」して、「ホーンディング」な展開する。
けど、映画のパロディを映画ファン的に愉しむなんてことは、出来ないのだ。大体、悪魔につかれた少女のメイクは、ちゃあんと、首が回るけどなんか、中途ハンバ、いかにも化粧しました!!!!って感じだしね。神父さんのお母さんが、少女のベッドにいたりする。あげくの果ては、緑の液体のかけあい、まるで、小学生のマクラ投げ、野球で優勝したチームのビールかけ、状態になるのだわさ。

バカやってる、バカやってる。
ようは、バカやってることによって、タブーの足跡を消していく手法をとってる。

そう言えば、もひとつ。女性差別もやってますねん。
ナイズバディだけど、顔はノーサンキューの幽霊の、顔に紙袋をかぶせて、お持ち帰り。顔はいらないの、いるのは、身体ダケ。主役の女の子は、さんざん、けなされるんだけど、それもね。
「友達だから、言ってはいけないけど、こういう場合だし、ホンマのこと言ってもいいよね」
みたいなの、腹の中では、「枝毛」「肌悪っ」と女性が気にすることを言いまくってるわけなのね。普段は友達ずら、していてもね。(←この緊急事態、そういうシーン、多し)

でもこれは、受け入れられている作品なのだ。私の場合は、不快感なかったし。エロネタの引き際がカラッとしてるから、流されている。これ以上引きずったら、シンドイの瀬戸際かもしれない。

しかしだな、中味はないよ〜、何もない。あるわけないっすか!

■Staff
監督:キーネン・アイヴォリー・ウェイアンズ Keenen Ivory Wayans
製作:エリック・L・ゴールド Eric L. Gold
製作総指揮:ボブ・ワインスタイン Bob Weinstein
   ハーヴェイ・ワインスタイン Harvey Weinstein
脚本:アリソン・フォウス
   グレッグ・グラビアンスキー
   デイヴ・ポルスキー
   マイケル・アンソニー・スノウデン Michael Anthony Snowden
   クレイグ・ウェイアンズ Craig Wayans
   マーロン・ウェイアンズ Marlon Wayans
   ショーン・ウェイアンズ Shawn Wayans
音楽:ジョージ・S・クリントン George S. Clinton
■Cast
アンナ・ファリス Anna Faris シンディ
ショーン・ウェイアンズ Shawn Wayans レイ
マーロン・ウェイアンズ Marlon Wayans ショーティ
トーリ・スペリング Tori Spelling アレックス
クリス・マスターソン Chris Masterson バディ
キャスリーン・ロバートソン Kathleen Robertson セオ
ジーナ・ホール Regina Hall ブレンダ
ジェームズ・ウッズ James Woods マクフィーリー神父
アンディ・リクター Andy Richter ハリス神父
クリス・エリオット Chris Elliott ハンソン
ナターシャ・リオン Natasha Lyonne ミーガン
ティム・カリー Tim Curry オールドマン教授
デヴィッド・クロス David Cross ドワイト
リチャード・モール Richard Moll 幽霊

ヒア・マイ・ソング〜歌って笑ってハッピーエンド?

愛らしいダメ男には、いつも人が集まってくる。
イギリス、リヴァプールのミュージックホールの支配人さん、その名も「ハートリーズ」ていう、ロゴの真ん中にハートを射抜いたのが入ってる舞台は、経営がちとやばかった。

そのための企画第一弾が、スペルが一字違いのフランク・シナトラ(KがCとかね。)
もちろん、大ブーイング状態。で、第二弾は、愛されて人気があるんだけど、犯罪者で逃亡中のジョゼフ・ロックのそっくりさん。これも、元・恋人さんの登場でオジャン。
軽快に笑わせてくれます。

コネタ連発、なのに、異様に温かい。
みんな、音楽が大好きでさ。

で、ダメ男、ミッキー・オニール、思い立ったが吉日。
ほとんど文無しで、友達をあてにして(タクシー代も)ジョゼフ・ロックさがしに奔走する。友達も変人がきた、と呆れてる。でも、つきあっている。

どうしようもないのに。
どうしもうもないのに、ね。

ミッキー・オニール、誰にも信用されてないのに、名前、連発している。
んでもって憎めない。最初はいい加減でも、それが通用しないとなったら、体当たりで、嘘抜きで、物事にぶつかっていくんだよね。とことん。

とことん、エピソード。
ジョゼフ・ロックに、底なしの井戸がある、と言われて友人と見に行く。
で、最初は小さい石をなげてみる。でも、音がしない。でも、確かめたい。だから、今度は大きい石を投げ込む。でも、それは、ただの落ちている大きい石じゃなくて、牛さんの鎖をつないでたから、さあ、たいへん。牛まで、井戸に引き吊りこまれそうになる。

アイルランドの自然が見事で。なんか、うっとおしいこと考えるまもなく、この作品に出会えてよかったな、うれしいな〜、と思いたくなる。ミッキー・オニールをみんなが、なんとなく愛してしまうみたいに、だんだん、愛してしまう。
物語は、キレイにまとまった佳作。キレイに登場人物さんは、惜しげもなく役割を持つ。あの一字違いのフランク・シナオラまでも。

「0011ナポレオンソロ」のイリヤクリアキン、デビッド・マッカラム氏の姿も。
ちょっと、おいしくない警察側の地団駄踏む役。でも、なんか、うれしい。

とにかく、コメディ映画でもないのに、笑って終われる作品。
他の方のレビューも評価高いみたいっすよ〜。おそらく、どこのビデオ屋さんでも、コソッとある作品。映画は、宣伝が大きいけど、レンタルもんは、出会いですもんね。出会えてよかったよん。


■STAFF
監督: ピーター・チェルソム Peter Chelsom
製作: アリソン・オーウェン・アレン
脚本: ピーター・チェルソム Peter Chelsom
エイドリアン・ダンバー Adrian Dunber
撮影: スー・ギブソン Sue Gibson
音楽: ジョン・アルトマン John Altman
 
■CAST
ネッド・ビーティ Ned Beatty
エイドリアン・ダンバー Adrian Dunber
シャーリー・アン・フィールド Shirley Anne Field
タラ・フィッツジェラルド Tara Fitzgerald
ウィリアム・フットキンス William Hootkins
デヴィッド・マッカラム David McCallum
ジョー・カディ

10億分の1の男〜ハズレがあるならアタリもあるわけだ。

常識のなせるワザなのか。
人間って、可能性を自分から狭めているとこあるよな。例えば、宝くじ。当たるはずない。100分の1程度でも、自分が99人になる可能性の方が高い、とか、どっかで思ってる。

まあ、なんて夢のない話、なんて思わないでね。
この映画にはサムさん、サミュエルさんという老人がいる。
で、世界中の運試しさんたちが、このサミュエルさんを目指してトーナメント状態になってるわけなんだな〜。彼に挑める挑戦権を得るために、数々の運試しギャンブルが企画されている。
例えば、目隠しして、車が往来する道を横断してみる。
車に当たって死ぬ確率。
車に当たらずに横断出来る確率。
どちらも0じゃない、0じゃないのだ。
夢のない話になってきました。ハズレじゃなくて、アタリがある。
でも、アタリじゃなくて、ハズレもある。
くじがなくなったら、当たったヒトとハズレたヒトがいるわけだ。
サミュエル老人への挑戦は究極のギャンブルである。
6つのうち、5つの弾丸が込められたピストルを持ち、サム老人のこめかみを狙う。
彼を殺すことが出来たら、大当たりである。
だが、これまで多くの方々が挑戦して、失敗してきた。
失敗したら、老人の順番だ、ピストルを渡さなければならない。
バーン。

そんなこんなで、主人公が出てこないまま、映画のお話をしとりますがな。
でも、サミュエル老人にいきつくことが、映画の全てであります。
人類の巨大な「運」ピラミットの頂点。
アタリ続けたハズレなしのたった一人の場所にいる老人。
彼に夢があったとは思えない、むしろ、ハズレを見続けて日々。
ユダヤ人だから、彼が主人公に話すガス室エピソードは、サム老人をピラミットの頂点へ向かわせる入口だった。

「運」というものの、見えないもんを見事に映像化した、スゴイ作品。
スゴイとしか、いいようがないよ、あるんだよ、「運」。アタリはあるのだよ。
ハズレばっかりもあるけどね、アタリもあるのだよ。

映画は乾いて、殺風景だけど、「愛」で終わるのだな。
写真の扱い方がとっても興味深い。ヒトの写真を持つことって、そのヒトの「運」ももらうことなんだな。
10億分の1の男
■Staff
監督: フアン・カルロス・フレスナディージョ Juan Carlos Fresnadillo
製作総指揮: フェルナンド・ボヴァイラ Fernando Bovaira
エンリケ・ロペス・ラビニュ Enrique Lopez Lavigne
脚本: フアン・カルロス・フレスナディージョ Juan Carlos Fresnadillo
アンドレス・M・コッペル Andres M. Koppel
撮影: シャビ・ヒメネス Xavi Gimenez
編集: ナチョ・ルイス・カピヤス Nacho Ruiz Capillas
音楽: ルシオ・ゴドイ Lucio Godoy
 
■Cast
レオナルド・スバラグリア Leonardo Sbaraglia トマス
ユウセビオ・ポンセラ Eusebio Poncela フェデリコ
マックス・フォン・シドー Max Von Sydow サム
モニカ・ロペス Monica Lopez サラ
アントニオ・デチェント Antonio Dechent アレハンドロ

パンチドランクラブ〜キレちゃってもいい?上手くいかないから。

上手くいかないと、キレたくもなるのである。
キレやすいかどうか、ってより、上手くいかないのが続くとキレたくもなるのである。欲望が欲しいんじゃない、ただ優しい「感触」が欲しいだけ。だって、姉からは得られないもんだもん

自分を表現出来ないとキレたくもなる。
あんなふうにキレないさ、と言い切れるもんでもない。いつキレてもいいでしょ、ムカついてるでしょ、うるさい!とか思ってるでしょ、思ったことない?

そういうところを、ついてきた、ポール・トーマス・アンダーソン監督。
スゴイスゴイ、上手い。この監督、上手い、手放しで上手さに対して興奮する。アダムサンドラーのキレが演技を人ごとのように思っても、共感しても、それは、PTA監督の思うツボだ。あんまり観ないとこをパキッと切り取ってくれやがって、くそ〜、憎いね。

リナさんの部屋を忘れて辿りつけないバリー。
ここは迷宮か!!っていうくらい、グルングルン、回って回る〜。
それくらい、彼は回り道を余儀なくされ、何も言えずに、がんばっているんだ。がんばっても、上手く行かないからキレたくなる。上手く行けば、キレなくてもいいのにさ。あの電話だってさ〜、そんなつもりはなかったのに〜っていう、自分の想いとは裏腹にドンドン悪い方へ向かって行く。

上手くいなないのだ。
でも上手くいきそうなリナさんとの恋。
キレるというのは、プラスへも向かうのね。ハワイでのラブシーンのお伽ばなしのような感じが、どういうわけが全体と調和している、変なの。

オルガンは上手くいかないバリーそのもの。メロディが奏でられない。
でも、ここぞの時はプラスにキレるのもいいかもね。

あら迷惑。そんなこと、おっしゃらないで。
たまにはキレないとやってたらない世の中の一部が、恋と絡んで、とってもヘンテコリンに表現されているのである。


■Staff
監督:ポール・トーマス・アンダーソン Paul Thomas Anderson
製作:ジョアン・セラー Joanne Sellar
    ポール・トーマス・アンダーソン Paul Thomas Anderson
    ダニエル・ルピ Daniel Lupi
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン Paul Thomas Anderson
撮影:ロバート・エルスウィット Robert Elswit
編集:レスリー・ジョーンズ Leslie Jones
音楽:ジョン・ブライオン Jon Brion
■Cast 
アダム・サンドラー Adam Sandler バリー・イーガン
エミリー・ワトソン Emily Watson リナ・レナード
ルイス・ガスマン Luis Guzman ランス
フィリップ・シーモア・ホフマン Philip Seymour Hoffman ディーン・トランベル
メアリー・リン・ライスカブ Mary Lynn Rajskub エリザベス

ラスト サムライ〜アメリカでつくった日本史の教科書なんだってば。

銃の歴史がスゴイのよ。
刀よりも詳しいと思うのよ、アメリカだから。最初、ネイサンは皆さんの前で、銃の宣伝をする。この銃はインディアンを殺して改良に改良を重ねてるから、いい銃だよ、って。で、日本に来て、大砲がやってきて、次がガトリング銃だしょ。あああ、さすがだ、銃の歴史だ。人殺ししながら、銃は改良に改良を重ねている、人殺しの歴史。

んなもんより「武士道」のこと、書くのが本筋だけど。
でも銃の歴史の方がスゴイんだってば。あれを、日本を舞台にしてあんなふうにアレンジするってスゲエ。あんなこと、なかなか出来ないって、私は驚嘆してんだよ、銃の歴史は人殺しの歴史。まだ、それ言うかって、言うもんね、スゲー。脚本、スゲー。それが、アメリカから日本に流れてくるんだもん。

「武士道」っていうよりも、ジャパンプレミアの映像で、中村七之助くんが言ってた、挨拶とかの話の方が気になるのだわさ。日本人として観れば、必要以上に挨拶して見えるかも知れないけど、挨拶は大事だもんね。現代は挨拶が抜けている。ネイサンも「Thank You」が「ありがとう」に変わっている。お礼を相手に通じるように言うのはとっても大事なんだ。挨拶は、社交辞令もあるけれど、リスペクトすることだもんね、リスペクトを相手に意思表示する、単純な手段。それがないから、もめ事が起きるんだわ、うん。

どうもね、私は、文化の方が気になるの。死生観一つにしても。
切腹をどう解釈するか。切腹そのものには、肯定するつもりはない。けど、切腹を望む死生観とアメリカ人の死の感覚とか、違うんだよな。私なんか勝元、死ぬなよ、生きて、言いたいこと言えよ、刀なんか会議終わってからさしたらいいじゃん、と思うのだけど、逆に、死んで、時代に釘を刺す、という感覚も理解できないことはない。事件は起きてから、人は動くのである。

はっきり言って、スゴク上手く説明出来ない。もどかしい。

ただね、案外、この映画は考えられる映画なの。いろんなことを考える。新しい時代の中で、古いものは駆逐されるんだろうな、確かに、挨拶をきちんとする、なんてのも、駆逐されつつあるかも知れない。でも、どんな新しいものも、古きものの上にある。古きものがないと新しいものは生まれない。

皮肉にもそれは銃の歴史。前の戦争の「教訓」が新しい「銃」を生む。

でも違うのだ。ネイサンは生き残ったもんね。新しいは常に、古いものと融合している。新しいものはそれを認めたくなくてウダウダ言ってる子供みたいだ。儒教的精神がどうのこうのでなくて、皮肉にも銃の歴史が物語っている。アメリカが得意な銃の歴史がね。

勉強させてもらった。非常に、いい勉強させてもらった。
したが、トムさん、ワンダーランドを愉しんでいたみたいっすよ。もう、うっとり、陶酔って感じで。どうせなら、彼がプロデュースしてない「ラスト サムライ」ってもどうなるか、観てみたいもんだな。


■Staff
監督:エドワード・ズウィック Edward Zwick
製作:トム・クルーズ Tom Cruise
   トム・エンゲルマン Tom Engelman
   スコット・クルーフ Scott Kroopf
   ポーラ・ワグナー Paula Wagner
   エドワード・ズウィック Edward Zwick
   マーシャル・ハースコヴィッツ Marshall Herskovitz
製作総指揮:テッド・フィールド Ted Field
   チャールズ・マルヴェヒル Charles Mulvehill
   リチャード・ソロモン Richard Solomon
   ヴィンセント・ウォード Vincent Ward
脚本:ジョン・ローガン John Logan
   エドワード・ズウィック Edward Zwick
   マーシャル・ハースコヴィッツ Marshall Herskovitz
撮影:ジョン・トール John Toll
編集:スティーヴン・ローゼンブラム Steven Rosenblum
音楽:ハンス・ジマー Hans Zimmer
 
■Cast
トム・クルーズ Tom Cruise ネイサン・オールグレン大尉
ティモシー・スポール Timothy Spall サイモン・グレアム
渡辺謙 Ken Watanabe 勝元盛次
ビリー・コノリー Billy Connolly ゼブロン・ガント軍曹
トニー・ゴールドウィン Tony Goldwyn ベンジャミン・バグリー大佐
真田広之 氏尾
小雪 たか
小山田シン 信忠
池松壮亮 飛源
中村七之助 明治天皇
菅田俊 中尾
福本清三 寡黙なサムライ
原田眞人 Masato Harada 大村

奇人たちの晩餐会〜人のことバカっ!ちゅ〜人がホンマのバカ。

出版業界にプロシャンさん。おお、細身の男前。あん、誰かに似てるな、誰だろう。こういう役を佐藤浩市さんに演じていただいたら、おもしろいんだけどね。実は、舞台版で、明石家さんまが彼の役をやっていたようだ、と最初から、思い切り、話それてまんねん、すんません。でも、それるついでに、超問題オジサン、マッチ棒工作が趣味の税務署員、ピニョンさんの役は、ジミー大西のような気がする。キャスト表観てないよん、ポスター観ただけ、でも、間違いないでしょう、たぶん。

でも、考えてみたら、舞台版で明石家さんま×ジミー大西の組み合わせだった、って言えば、結構、この映画を語っているかも知れない。明石家さんまが演じてるってのも。


やっとこさ、本題に戻ろう。
この設定にはちょっと、ムカツク。若くして成功したビジネスマンたちが、まるでストレス発散とばかりに、「バカ」と彼らが認定した方々を晩餐会に招待して、チャンピオンを決めるというイベントをやっていた。そうだな、ようは、人を笑って、笑いでストレス発散、うげー、ムカツク企画。
まず、映画の冒頭に、「ブーメランバカ」(バカの表現は、映画の説明のために、あえて使うね。いいこちゃんぶっても仕方ないし)が公園で、ブーメランの稽古してたの、そういう方をもし、公園でみかけたら、やっぱ、不思議でしょ、不思議な感じ。
でも、映画はこの晩餐会の中継をするわけじゃない。だって、主人公のプロシャンさんは、ぎっくり腰で晩餐会には行けなくなってしまうんだもん。

ピニョンさんはプロシャンさんが気の毒で、助けてあげよ〜とするのだけど、次から次へと泥沼に。
しかも、ピニョンさんは、戻ってきた奥さんを追い返してしまったり、奥さんの居場所を探ろうと友達に電話して、要件を忘れてしまったりと、ワザ爆裂しちゃうという、コメディ具合。マジ笑える名人芸なの。

ところが。実は社会的に成功しているはずのプロシャンさんが、ドンドン惨めになっていくの〜。奥さんに逃げられ、ぎっくり腰。妻の元・カレにはハナで笑われっぱなし。しかも、税務署員がやってきて、美術品のコレクターのカレは大ピンチ。

バカという人がバカになる、典型的なよく出来たお話。しかも笑えるからね。
んにゃー、ピニョンさんと、プロシャンさんのキャスティングが見事、外見で人をみて、「バカ」を浮かびあがらせて、人の中身を問いかける、なかなかの強者映画でございました。


奇人たちの晩餐会 (1998)
■Staff
監督: フランシス・ヴェベール Francis Veber
製作総指揮: アラン・ポワレ Alain Poire
脚本: フランシス・ヴェベール Francis Veber
撮影: ルチアーノ・トヴォリ Luciano Tovoli
音楽: ウラディミール・コスマ Vladimir Cosma
 
■Cast
ジャック・ヴィユレ Jacques Villeret フランソワ・ピニョン
ティエリー・レルミット Thierry Lhermitte ピエール・ブロシャン
カトリーヌ・フロ Catherine Frot マルレーヌ
ダニエル・プレヴォスト Daniel Prevost シュヴァル
フランシス・ユステール Francis Huster ジュスト・ルブラン
アレクサンドラ・ヴァンダヌート Alexandra Vandernoot クリスティー

奇人たちの晩餐会 [DVD]

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